03.8.12(火)札幌→支笏湖→苫小牧

2021年5月18日サイクリング

■16/7/3新規追加
文:高森千穂


苦労してたどりついた支笏湖。後ろは恵庭岳。

 


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この日は、函館の湯の川温泉に泊まることになっていた。札幌から支笏湖経由で苫小牧に出て、苫小牧からはJR函館本線で函館に出る予定。苫小牧14時過ぎの特急列車の指定席をとっていたので、なんとしてでもこの列車に間に合うように走らなくてはならない。この列車を逃すと、2時間待たねばならず、それでは函館に着くのが19時すぎとなってしまう。温泉旅館に予約を入れていたため、早めに到着したかったのだ。
札幌の朝は、とてもよい天気。気持ちよく晴れている。やっとやっと、待望の「晴れ」だ。7時過ぎに朝食をすませ、まずは豊平川沿いに真駒内に向けて自転車道を走る。


とうとうと流れる川を横目に、整備された自転車道を走るのは楽で気持ちがいい。起伏もほとんどない。自転車に乗ったスーツ姿のサラリーマンと、何人もすれちがう。自転車通勤してるのか。うーん、うらやましい。けど、冬場は自転車に乗れないだろうな……
快適な走行に、つい気が緩み、また「だらだら走行」になる私だったが、なにせ今日は、「14時までに苫小牧に到着しなくてはらなない」という大命題がある。さらに、「支笏湖まで、600メートルの峠を越える」と、茅沼氏に告げられる。「600メートル??」しかも「約70キロ」を「約5時間」で走るということは、常に15~16キロで走らなくてはならないということ。それって、かなり過酷なんじゃ??
支笏湖までは「滝野上野幌自転車道」が通っているし、支笏湖から苫小牧までも国道沿いに自転車道があるという。「子どもでも走れるとなっている」そうなので、当初からかなりスピードを意識して走り始めたのだが……
真駒内までは、非常にゆるい坂で、これは「やや負担」程度。平均時速で15~6キロをキープ。上り坂でこれだけのスピードがでるのならば、問題ない。
真駒内の町を抜け、民家がとぎれいよいよ山越えが始まる、というところで、いきなり傾斜がきつくなる。常に5%前後で、7%以上のところもある。とたんに時速はがたっと落ち、どうがんばっても5~6キロとなる。

この「滝野上野幌自転車道」、「自転車道」とは名ばかり。実際は山を越える車道の横につけられた歩道の中央部に、白線をひいただけなのである。白線がひいてありさえすれば「自転車道」と呼ぶのか? 山を越えるなんて、いったいこれのどこが「自転車道」なんだ?と、走っているうちにだんだん腹が立ってくる。断言しよう、この自転車道、ママチャリでは、決して走破できない!
これのどこが「子どもでも走れる」なんじゃーと、涙さえでてきた。けれども、自力で進む以外、苫小牧へたどりつけるすべはない。全身汗だらけ、頭からも顔からも汗がしたたり落ち、「なんであたしゃ、こんなに苦しい思いをしてまで自転車に乗っているんだ?」とはなはだ疑問になる。

「このままでは、とても予定通りに苫小牧へ行けない!」
危機感を抱いた茅沼氏の自転車にすべての荷物を乗せ、私は非常に身軽な状態で峠越えに挑むことに。だがしかし、やっぱり上り坂では、平均時速5~6キロの壁を乗り越えることができない。ううう、私って脚力ないんだわ、と実感。
途中、どこかの大学の陸上部の選手たちの大体と出会う。この「滝野上野幌自転車道」でトレーニングらしい。道のところどころに、陸上部員がタイムウォッチのためか立っている。マイクロバスでやってきた選手たちが、いっせいにスタート。軽々と私たちの自転車を追い抜いていく。さらに追い抜きざまに会釈までされた。あっというまに、選手たちの姿は遠くに離れ、見えなくなった。
この写真は、最も高度の高い峠付近。ここで約600メートルだったそうな。たしかにまわりの山々が視線と同じ高さに見え、「うわー、高いー」と感じられた。
 さて、「苦あれば楽あり」とはよく言ったもので、峠を越えたあとは、多少のアップダウンはあったものの、基本は下り一方。時速はいきなり20キロアップ。25~30キロで、転がり落ちるように支笏湖を目指す。さっき追い抜かれた陸上部員の後姿も見えてきた。下り坂では、スピードは圧倒的に自転車の勝ち。今度はこちらが会釈しながら追い抜かした。
札幌では快晴だったこの日、峠が近づくにつれて曇りとなり、支笏湖付近では雨が降っていたらしい。アスファルトの道路はしっとりとぬれている。そこに日が差して、もうもうと水蒸気があがっていた。まるで温泉のように、その水蒸気はほかほかと温かい。猛スピードで坂を走り降りると、それまでの大汗が嘘のように体が冷える。けれどもこの水蒸気のほかほかは、心地よく温かかった。


そして、ついに支笏湖に到着!! 湖面が見えたときは、涙が出るほど嬉しかった。支笏湖の標高は200メートル。さっきの峠から400メートルも転がり落ちてきたわけである。
支笏湖の東岸を走り、ちょっと湖面におりて、お茶で一休み。支笏湖はアヒルボートがたくさん浮かぶ、歓楽的な湖である。マイカーのひとたちがお茶やアイスで一休みする横で、私たちも休憩。ここで早いお昼を食べてもよかったのだが、まずは電車の時間優先ということで、苫小牧を目指して走り始める。
ちなみに、札幌→峠、よりも、支笏湖→峠、の方がより勾配がきついようだ。札幌から支笏湖をめざした私たちは、まだ恵まれていたのだ。
「滝野上野幌自転車道」、走っている自転車はほとんど見かけなかった。途中、一度だけ、一台のMTBに追い抜かされた。すれちがったのはロードレーサー一台。ロードレーサーでさえ、ゼイゼイというように急勾配の坂をのぼっていた。

支笏湖から苫小牧へは国道276号に並走する自転車道を走る。
この自転車道は大変快適! 緩やかな傾斜で、森の中につけられた、きれいに舗装された道路を走る。木漏れ日が非常に美しい。

さっき泣いたカラスがなんとやら。
余裕のピースサインの高森。

こういう道路を「自転車道」というのよ、と納得。これならば、ママチャリだって走れるわと思う。しかも私たちは、ゆるやかな傾斜を下っているのだ。(支笏湖→苫小牧まで20キロ弱。標高200メートル差を降りていくだけで、ほんとに楽々)
街に近づくにつれ、天候はまたよくなり、苫小牧郊外についた頃には快晴。というわけで、前半と一転して、実に快適なサイクリングとなった。
予定よりかなり早く、13時過ぎに苫小牧駅前に到着。昼食に、駅前のラーメン屋へ。このラーメン屋、ものすごいボリュームで、途中、カロリーメイトをかじりながら走っていた私は食べきれないほど。残してごめんなさい。でも、とてもおいしかったです。

予定通り、苫小牧14時1分発の「北斗14号」に乗車。ほんとはFURICO281(キハ281系)の「スーパー北斗」に乗りたかったんだけどね、乗ったのはキハ183系、ただの「北斗」でした。(17年前、キハ183系を初めて北海道で見たときは「なんてかっこいいんだ!!」と感動したんですけどね……。人間、わがままなもので)


さて、このまま順調に走れば、17時前に函館に到着して、ゆっくり湯の川温泉につかってから豪華な夕食、となるはずだった。

ところが、洞爺駅で、なんと、1時間30分も停車してしまったのである。理由は、八雲付近で集中豪雨があって、運行停止となったのだ。並走する国道5号で、土砂崩れがあったとのこと。八雲は、天候不順な地として有名なところ。まあ、待つしかないよねと、洞爺駅のキオスクでビールを買って、だらだらと車内で過ごす。
ようやく走り出して、いったいどれぐらいの雨が降ったんだろうと、窓の外を眺めていたら、海にそそぐ小川はどれもまっ茶色ににごり、濁流となって海に流れ込んでいた。問題の「土砂崩れ」現場では、すでに土砂は片付けられていたものの、ブルドーザーやパトカーが現場に待機したいたりと、物々しい雰囲気だった。
写真は駒ケ岳。(森駅付近)よく晴れた日の夕方、大沼国定公園のながめはなかなか美しい。せっかくがんばって走った割には、すっかりスケジュールがくるってしまったけれど、「北斗」の車窓は大変に美しかった。

18時40分。函館到着。函館駅に来るのは、おそらく5~6回目だと思うが(さらに、7年ぶりだったと思う)、あまりの変貌振りに驚いた。まるで「見知らぬ駅」だった。すごく大きな駅だったように記憶していたのに、こじんまりとしており、さらに駅前は整備中。
しかし、感慨にひたっている暇は無い。函館駅から7~8キロ離れた湯の川温泉に早く行かねばならない。急いで自転車を組み立て、暮れなずむ港町をかっ飛ばす。
かくして、真っ暗になる寸前に、予約していた温泉宿に到着。湯の川温泉で最も大きな、歓楽的な旅館だった。(温泉宿は、ひなびた一軒屋よりも、巨大な温泉宿の方が好きな私たちです。あのにぎやかさが好きなんです)
汗でベトベトの体を温泉で流し(女風呂からは、函館山が一望! いいお宿でした)、20時過ぎ、部屋でカニ料理を食べ、満足な夜を過ごしたのだった。
この日の総走行距離は85キロ。