05/08/16 道北ツーリング4日目
この日は、朝一の船で礼文島にわたった。朝一といっても、10時5分発。
宿がフェリーターミナルそばのペシ海岸に面していて、砦のような大きな岩、ペシ岬から朝日が昇るのが見えるとのこと。船の時間はゆっくりだけれど、これは早起きする価値がありそうだ。
朝5時に起床。(なにせ、毎日寝るのは夜の9時とか9時半なので……ふだん、朝には滅法弱い私だが、早寝をすれば、だれでも早起きはできるのだと悟った)、日の出は4時前だが、岬は高いので、まだ太陽の姿は見えない。
岬への急な道をのぼり頂上につくと、一気に視界が開ける。昨日自転車で走ったところが一望できた。また、稚内の町もはっきり見えるし、遠く、サハリンの影も見える。礼文島はすぐ目の前だ。利尻富士に少しだけかかっていた雲が、いつまでたっても晴れなかったのが残念だった。
朝食(また、フェリーターミナル二階の食堂だった)のあと、昨日、自転車道を走ったために、未走区間となっていた鴛泊港から野塚パーキングまでの海岸線を走った。途中、ターミナルから一キロ弱のところに、湧水「長寿の泉」を発見。利尻島では「甘露泉水」が有名だが(ターミナルにも温泉にも、「甘露泉水」の水がひかれていた)、ほかにも湧水が何箇所かあった。「長寿の泉」は冷たく、市販されているミネラルウォーターよりも柔らかく、甘みがあった。必需品の水がただで手に入るなんて! うはうはとカラのペットボトルに入れた。礼文島に渡る直前にも汲みにくることにしよう。
野塚パーキングエリアまでは、海岸ギリギリの道で、少し波が高くなると、越波する。ザバーンと道路に水がかかるが、ときたま走る乗用車は、とくに気にしている様子はない。海をのぞくと、波に大量の昆布が踊っていた。波がくだけると、昆布もいっしょにせりあがってくだけていくさまは、とてもおもしろかった。
野塚パーキングエリアで記念撮影。相変わらず利尻富士は雲の中。早朝よりも、もっと雲が出ている。島の北部には、風の関係でどうしても雲がかかってしまうようだ。
フェリーターミナルにもどり、受付時間の9時15分ちょうどにキップを買い(今日はものの30分の航路なので2等船室、自転車は昨日と同じくそのまま乗せる)、ターミナル前の土産物屋をぶらぶらとのぞきこみ、「りっぷちゃん」Tシャツを買った。りっぷちゃんとは、利尻島のキャラクターのリスで、利尻富士町の町名標は、りっぷちゃんが自転車に乗っているものだった。また、街灯の上には、りっぷちゃんのイラストがかならずついていた。というわけで人気があるのかと思ったら「1980円のところ500円引き」とのこと。売れ残り品だったのだろうか? りっぷちゃんは売れないの?
今日の船は「プリンス宗谷」 鴛泊港付近は相変わらず雲が多いが、港を離れるとすぐに雲が晴れ快晴に。たくさんのかもめが船を追いかけてくる。観光客が投げるスナック菓子を求めて、だ。このスナック菓子、カモメの体には消化が悪くてよくないそうで、「カモメにお菓子をあげてはいけません」の張り紙が船内にあった。それでもカモメは追いかけてくる。結局、利尻島から礼文島まで飛んでしまったカモメがほとんどだった。
40分の船旅は、デッキで快適に海を眺めているうちに、あっという間に終わってしまった。定刻どおり、10時45分に、礼文島の香深(かふか)港に到着。礼文島は利尻島より小さいし、島内全部に道があるわけではない。島の東部にのみ道が通っていて、西部にはほとんど道はない。今日の宿は、島の北部の船泊の集落。香深港は南部の集落なので、荷物をすべて持ったまま走ることに。
まずは、香深港の反対側、島の南西部にある元地の集落へ。この集落へ行くには、峠を一つ越えなくてはならない。真っ青な快晴の空の、じりじり太陽の下、急坂を登り、一気に120メートル上る。海の向こうでは、利尻富士が相変わらず雲に姿を隠していた。(どうして、利尻富士のまわりだけ、雲が晴れないの?)とうらめしい。
「桃岩トンネル」を抜けてびっくり。 「うひゃー!」と思わずさけんだ。久しぶりに「風景に心底びっくり、大感動」を味わった。
目の前に桃岩の巨大な奇岩がそびえたっていた。コバルトブルーに輝く海まで、雪崩落ちるようにつけられた道路。真夏の太陽の下で、うねる山並みに茂る緑はどこまでも緑で、海はどこまでも青い。これ以上はない、というような風景だった。今回の旅行、あまり下調べせずに来たので、桃岩がこんなに大きくて、そして絶景の場所であったとはまるで知らなかった。知っていたら、逆に感動がもっと小さいかっただろう。知らなくてラッキーだった。
キラキラの海を横目に、元地海岸まで道路をかけおりる。メノウ浜に地蔵岩を堪能し、海岸沿いにある食堂(というか、屋台に近い)で昼食をとることにする。道路におかれたテーブルでの食事である。
うに丼1000円と、ここはとてもお得である。近くにユースホステルがあって、学生の客が多いからだろうか。(この桃岩ユースホステル、20年以上前、私がユースを泊まり歩いている頃から、「きちがいユース」として有名だった。今でも有名なのかな?)ごはんは少なめだが、昨日礼文島で食べたうにの量と、ほとんど変わらない。ちなみに、食堂は2軒あったので、それぞれでうに丼を一つずつ注文。比べたところ、一方の店の方が明らかにうにの量がおおかった。(どちらの店かはヒミツです) そのほか、じゃがもち、かぼちゃもち、トド肉の串焼きを食べた。トド肉については「トドを食べました」の証明書がついてきた。
再度、桃岩トンネルまで120メートルかけあがり、トンネルを抜けたところで海に目をやると、利尻富士が全貌を現していた。やった! やっとやっと利尻富士とのご対面だ。
少し下って車道をそれ、礼文林道へ入る。ここはガレガレのダートで、結構傾斜もある。「えっ、ここを走るの? マジ?」というような道である。とても自転車で走ることなどできず、尾根(標高200メートルほど)までの1キロは、自転車を押して上ることに。
礼文林道はトレッキングコースで、道幅がとても狭いので一般車は「自粛」。ミニバイクで走ることも多分無理なので、出会った車両は、公園パトロール隊の車2台と自転車1台だけだった。そういう意味では、非常に安全な道である。
林道を上るにつれ、すばらしい展望が広がり始める。 熊笹に覆われた稜線がうねうねと続き、利尻富士は雲ひとつかからずくっきりと見える。さっきうに丼を食べた元地海岸がはるか足元に見える。シティサイクルが本来の姿のBD-1に、ガレガレの林道を走らせるのは申し訳なかったが、「こんなところにやってきたBD-1はそうそういないだろうから」と、自転車に謝る私。礼文林道は本当にすばらしかった。ここは絶対おすすめ! ぜひぜひ、行ってみてください。
礼文林道は全長8キロメートル。ガレガレロードは林道入口から尾根までの1キロ程度で、香深井までの残り6キロの平坦区間と下り坂は、ほぼ走ることができた。とくに平らなところは申し分ない、しまったダートである。ただし、香深井から上ろうとするとやっぱり無理かも。下りだからこそ走れたのかもしれない。
途中、自転車を降りて、礼文林道から分岐した道を歩いて礼文滝へ寄る予定だったが、ここは思ったよりもハードなトレッキングコースだった。3分の2(1キロ半ぐらい)を歩いてから、時間を考え、「ハイジの谷」を見渡せる場所で断念してひきかえした。もっと時間のあるときに、トレッキングのためだけに来てみたいものだ。
礼文林道が終わり道道40号へ出る。ここからは、ほぼ平坦な海外道路を10数キロ進むのみ。向かい風だが、昨日ほどひどいことはなく、快適に走る。利尻富士には、夕方になるにつれ、雲がかかるようになった。昨日と同じだ。
さて、今晩の宿、船泊へ行くルートとして、高山植物培養センターのある道を選択とした。というのは、途中にある「エリア峠」がいいと聞いていたからだ。ところが、この道、最近新道になったらしく、峠はなくなり、ただの趣のない「坂」になっていた。旧道はあちこちで寸断され、通行止めに。かつては「峠」と呼ぶにふさわしい道で、久種湖や日本海を一望できたそうなのに。めちゃめちゃがっかりだった。道理で、今のガイドブックには「エリア峠」が載っていないわけだ。坂を下り、久種湖を横目に船泊の集落へ向かう。16時15分、すぐに
民宿・海憧
を発見。もとはユースホステルだったそうだが、申し分なく立派な民宿だった。
となりの銭湯、船泊湯で汗を流してから、旅館並みに豪華な夕食をとる。生樽が届けられており、中ジョッキも飲むことができた。快晴だったわりには、日暮れどきには雲がでてしまい、すばらしい夕焼けが見られなかったのは残念。
礼文はいい島だ。これだけすばらしい景色を見てしまうと、今後、普通の景色ではなかなか満足できないだろうな……ここは「日本で一番美しいところ」なのかもしれない。