8/15(水) 曇りのち雨 浜益-雄冬-増毛-小平-羽幌 107km ルート図
(文:高森千穂)
朝、大雨はあがっていた。旅館の前の小川もずいぶん落ち着いている。急斜面に流れる川は、あっというまに水量が変わるのだと悟った。
さて、今日は、今回の旅の目的の一つ、暑寒別岳がある。かつては海路以外に交通の手段のなかった雄冬峠を越え、増毛に出る。増毛から先は、三年前に走ったオロロンラインをひたすら北上し、110キロの行程で羽幌まで行く予定だ。
雄冬。現在は国道が通っているが、「陸の孤島」ということで、二十年以上前(当時は本当に陸の孤島だった)からとても興味のある地だった。道路工事の技術が進歩し、こうして自転車でも訪れることができるようになって、大変ありがたい。
午前中は天気がもちそうなので、早々に宿を出発する。雄冬岬に向かって浜益側の国道231号は、新しい道路のせいもあり、よく整備されて、二ッ岩トンネル、ガマタトンネルと2~3キロの長大トンネルが続く。トンネル以外は断崖絶壁の非常に厳しい地だ。よくもこんなところに道を作ったと思う。
トンネルのおかげで、アップダウンもなく、あっとうまに雄冬岬、そして白銀の滝についてしまった。それでも雄冬の集落が見えたときには「ああ、ついにここに来たんだ」と感激した。
浜益側はトンネルで終始したが、増毛側は古いトンネルや旧道が続き、こちら側の方が困難な道という感じがする。ただし、古いトンネルは新しいものに作りかえられており、以前に比べればかなり整備されているようだ。雄冬岬と増毛の中間地点にある岩尾温泉は、高台の小ぢんまりとした温泉で、ちょっと行ってみたい。
日方泊トンネルを上り、マッカ岬の最後の峠は200メートル近くあり、「断崖絶壁」を感じさせた。峠を下ると増毛の市街に出る。3年ぶりに訪れたが、前回は大賑わいだったのに比べ、天候の悪さのせいかひっそりしていた。
増毛駅構内に蕎麦屋ができていたので、まだ10時半だったが、雨が降り出してからの昼食は面倒だしと、早めのお昼ごはんとする。ざるそばと冷やしたぬきを注文したが、どちらもとてもおいしかった。増毛産そば粉を100%つかっているのとことだ。
舎熊駅あたりで雨が落ち始める。バス停で雨装備をして走りだすが、留萌市街の手前6キロ付近で大雨になる。あまりに激しいので、バス停に一時避難。なかなか弱くならない。
小降りになったところで走り始めるが、留萌市街のはずれでまた大雨になる。退避場所もないし、待っていても変わらなそうだし、まだあと45キロもあるので、駅や町の中心に寄ることはせず、そのまま国道233号に進むことにした。
雨は時折激しく、やむ様子は全くない。大雨の中、40キロ以上走るのは初めての経験だ。ただし、3年前に走ったことのある道で、ほぼフラットであることはわかっていたので強行したのだが、大雨の中を走るのは勝手が違った。
普通の雨は防げるゴアテックスも、大雨にはお手あげ。特に、もろに雨をあびる腕は、裏地にまで雨が染み出してくる。靴カバーとゴアテックスのわずかな合間から雨が入り込み、靴下はぐっしょり。靴下をとおしてぬれるのだから、たとえ靴自体がゴアテックスであっても効果はない。通常の雨装備では、大雨には対処できないのだと悟った。
留萌市の隣、小平町には道の駅があったはずだが、これがなかなかたどりつかない。ようやく14時過ぎに道の駅おびら鰊番屋に到着し、東屋で一休み。ゴアテックスを脱ぎ、しずくをはらい、ぐしょぐしょの靴下の雨水を絞った。
バイクライダーもたくさん休憩しており、やはり、グローブを絞ったり、濡れた上着をふいたりしている。バイクも同じく濡れるのだ。
お昼が早かったので、雨の様子を見ながら食堂で、タコざんぎとホットコーヒーでひとやすみする。雨はやむ気配がないのであと30キロ、がんばることにする。
左手に海、右手に原野のオロロンライン、晴れていればうきうき走れる道だが、大雨のもとでは陰鬱なただの僻地である。しかも道路には水たまりができており、車の跳ね上げる水をまともにかぶることも数回。もはやぐしょぐしょなので、いまさら泥水をかぶっても変わりはないのだが、車、もう少し優しく走ってくれないかな。。気づいてないのかな。。。
苫前の「上の平グリーンヒルウィンドファーム」の風光明媚な地すら見る余裕なく、ただひたすら走るのみである。写真を撮るなどもってのほか、カメラはカバンの奥底にしまったままだ。
16時過ぎになんとか苫前の道の駅風Wとままえに到着。多数のバイクが、屋根の下にずらりと並んでいる。同じようにずぶぬれのライダーが雨宿りしていて、皆、「サイアク」つぶやいている。
苫前から羽幌まではあと7キロ。走るしかないので、ぐしょぐしょのまま、開き直って走る。「あと6キロ、あと5キロ……」と、つぶやきながらの走行は、もはや修行のようである。バッシャーンと車の水を頭から水をあびても、それが目にはいろうと、「どうでもいい」状態である。羽幌市街が見えてきたときには、心の底から感激した。
今日の宿は、北海道によくあるタイプの普通の旅館「冨士屋旅館」。ただし、日観連会員のちょっと上等な感じで、さらに女将さんがとても親切で、かわいたタオルを用意してくれたり、上着やカバーをボイラー室にほしてくれたりして、大変助かった。
(翌朝出発時撮影)
ついでに、旅館にしてはだいぶ料金が高い宿だったが、料理が非常においしかった。というか、とてもとても上品だった。東京の和食カフェの料理かとみまごうほどで、東京でもこんな上品な和食、食べたことがなかった。一泊二食8400円は、コストパフォーマンス的に、とてもよかった。おすすめの宿である。
今日は、本格的な雨装備はどうしたらよいか、大雨の中走るとはどういうことか、いろいろ学ぶことも多かった。この日の走行距離は107キロ。よく走ったと思う。