島牧-月越原野-熱郛-黒松内・・・長万部・・・森・・・鹿部
55km 曇のち雨
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【文:高森千穂(ねこBD)】
2日前までの天気予報では「月曜日は全道でいい天気」のはずが、まるではずれて、台風崩れの低気圧の影響で、空は重い雲に覆われている。特に南部の渡島支庁へ近づけば近づくほど、雨の降る時間が早くなるとのこと。
当初の予定では黒松内駅から函館本線沿いの国道で長万部に出て、そこから輪行のつもりだったが、黒松内道の駅へ出て、目名峠を越えて目名駅から輪行とすることに。いずれにしても、島牧から黒松内まで道道523号(美川黒松内線)を走ることには変わりはない。
おいしい朝食をとって、曇り空の中を出発。MTBの青年は今日は寿都に出て北上する予定だ。「お気をつけて」と、YHの入り口でお別れの挨拶をする。
数キロで島牧村の江ノ島海岸へ。地元の「江ノ島」と同じ名前で惹かれるものがあり、海岸前のレストハウスに泊まることも考えていたが、昨日は結構へろへろだったので、やはり手前のYHにしてよかったと思った。
400メートルの月越原野を越える道道523号は、ツーリングマップルでもお勧めルートだったし、島牧YHでも「イギリスのウェールズのような風景」とお勧めだった。ウェールズにはぜひ行ってみたい私(←イギリス児童文学かぶれのため)としては、なんとしてでも走りたい、天候がもってほしいと祈らずにはいられなかった。
遠くに原野のある丘が見え「あれがこれから越える丘だな」と思う。確かになんとなく、ウェールズっぽい。しかし、今走っている道は思い切り「日本の漁村風景」。家の前に木組みがあるのは、冬季には何かで覆うのだろうか?
国道229号と道道523号の分岐で右折。ほとんどの車は直進だから寿都へ向かうのだろう。このあたりの「都会」は寿都になるのかもしれない。
道道523号を上り始めて、すぐによい眺めに。晴れていたらさぞかし素晴らしかっただろう。風がものすごく強く、ここから先、非常に苦労しながら上ることになる。最初は上り坂のため暑く感じ、半そでで走ってきたが、徐々に寒くなってきて上着を着る。今回の旅で、上着を着るのはこの日が始めてである。
上るにつれ風はどんどん強くなり、車もほとんど通らず、まわりは原野が広がりさびしいかぎりである。荒涼とした風景に、「一人だったら走るのを遠慮したいなあ」という気分になる。この荒涼とした感じこそがウェールズ風?なんだろうか。「嵐が丘」などというフレーズが頭の中をかけめぐるが、あれは地方がちがう。ヨークシャーだったか?
猿払原野とか抜海とか、原野はそれなりに見てきたけれど、標高400メートルという原野はここが初めて。さびしい原野は十分堪能したので(^^;、次回は快晴の元の原野を見てみたい。ここは天気を変えて、もう一度訪れてみたい場所となった。
ピークはスノーシェルターとなっている。ここらあたりになると、まっすぐ走るのが辛いほどの強風で、自転車ごと飛ばされそうになる。車がほとんど通らないのが本当に幸いだった。
そしてここは島牧ウィンドファームとなっており、6機の風車がブンブン羽を回していた。「ぐぉーん、ぐぉーん」とものすごい音がする。風車と記念撮影をしてふと時計を見ると、予定より1時間遅れだった。強風のため、時間が非常にかかったのだ。今日は予定を変更しているが、元の予定だったら間に合わないところだった。
くだりに入ると「寒い」と感じた。自転車に乗っていて「寒い」と感じたのは久しぶりである。防寒のために合羽を着るが、強風に飛ばされないように着るのは大変だった。
島牧村と黒松内町の境辺りで雨が落ち始める。「昨日の立象山で運を使い果たしたかなあ」と、あきらめの気持ちで黒松内をめざして下りていく。寿都の方はまだ明るいのに……。
平地に下りるとますます雨が強くなったので、熱郛小学校(廃校)前バス停の小屋で雨装備をした。帰ってから確認したところ、しまださん・ロボさんもここで休憩をしていた。待合室の小屋は、数々のサイクリストを助けていると思われる。
おとといの反省から、今日はばっちり雨装備を決める。靴カバーもして、これならまったくぬれない。雨が降り始めてから気温が下がり寒くなったので、雨装備をしても暑くないのが救いだった。
12時15分頃に「道の駅 くろまつない」に到着。ここのレストランはパン屋が経営しているものだが、昼時のため大盛況である。テイクアウトのパン屋は大行列、レストラン部も行列である。今日は、雨が本格的に降り始めたので、もうあきらめて近くの駅から輪行することに決めたので、時間はたっぷりある。ゆっくりと「ランチセット」を注文する。シチューとベーグル・ホットドッグのセットは大変おいしかった。特にベーグルはパリパリで、なるほどこれならば行列になるな、と納得した。
さて、道の駅からの最寄り駅は、函館本線熱郛駅だが、途中でながめた感じではとてもとても小さな駅で、なんとなく不安になった。まさか列車が止まってくれない、なんてことはないとは思うが、ゆっくりと雨宿りできる雰囲気ではない。それにいくら「のんびりする」といっても、道の駅で2時間も時間をつぶすのはもったいないので、ある程度の大きさのある黒松内駅まで走ることにした。約10キロである。
やや小降りになったところで、道の駅を出発。最初は国道5号を走るので、雨の中、大型車が飛ばしてきてかなり怖かった。道道266号に右折すると、車はめっきりと減る。途中、ブナの北限といわれている、歌才ブナの森の横を通る。キャンプ場になっていたり、森の中は散策ができるようだが、雨なので人影はなかった。
黒松内駅には14時10分に到着。列車の時刻は15時02分なので、雨のしずくをぬぐったり自転車の汚れをふいたりして、ゆっくりと輪行準備をする。黒松内駅は立派な駅舎だが、今年の3月から無人駅になったとのこと。ちょうど上下線が交換する時間だったので、発車時刻が近づくと、10人近くが集まってきた。
長万部行きの列車は新型車の150系。列車の顔は「4つ目」で、遠くから見ても「おおっ」という感じである。蕨台駅・二股駅と列車で楽々過ぎるが、「貨車型駅」&「熱郛駅といい勝負の小さい駅」だったので、やはり黒松内駅で輪行でよかったと思った。
長万部駅では7分で「特急北斗」に乗換。次の停車駅の森駅まで40分である。長万部では雨はあがっており、森駅までの間も雨は降らなかった。
森駅では15分待ち合わせで、鹿部経由の函館行きの各駅停車に乗換え。森駅の向かいのホームに列車が止まっていたので、乗換えも楽々である。この各駅停車、私たち二人のほかにはたった一人しか乗っていなかった。(しかも、乗っていたのは鉄チャンだと思われる)平日ならば、おそらく高校生の通学列車なのだろうが、それにしても鉄道はまるで人気がない。
鹿部駅に近づいた頃にまた雨が降り出す。せっかくやんでいたのに運が悪い。鹿部駅は、原生林の中の駅である。今日は鹿部駅から1キロほどのホテルに予約していたので、雨の日の輪行としては便利だったのだが、「ほんとにこんな森の中にホテルがあるんかいな?」というぐらい、駅前はさびしかった。鹿部駅は集落から離れすぎているのだ。
どきどきしながら森の中を走り始めると、そこが別荘地であることに気づいた。ぽちぽちとおしゃれな家が建っており、「○○様予約地」みたいに、土地が売却済であることを示す看板が建っていたりする。そして、突然、森の中に大きなホテルが現れた。団体ツアー客が中心の温泉リゾートホテルであった。
夕食にジンギスカンを頼んでおいたのだが(ずっと魚料理だろうから、肉が食べたいかな、と思ったのだ)、ホテル側の手違いで、夕食の用意がされていなかった。雨は降っているし、町は遠いし「どうしよう」と思っていたら、団体ツアー客に混じってバイキングを食べて下さいとのこと。しかも先方のミスなので、夕食代をタダにしてくれた上に、ビール中ジョッキ2杯をサービスしてくれたので、お得な宿泊となった。もしや、ラッキーだったのか?
今日は足休めの日となってしまった。
鹿部のとあるホテル(名前は伏せときます)
1泊2食 8650円のところ、6560円にディスカウント。