北海道ツーリング6日目。未明に北海道胆振東部地震が発生しました。地震当日、雌阿寒温泉(オンネトー)から足寄、陸別を走った記録です。
「キュゥイ! キュゥイ! キュゥイ! 」と久しぶりに聞く音で、うつらうつらと眼を覚ます。
その数秒後、揺れが始まり10数秒にはおさまった。震度は3かな?4はない感じだった。緊急地震速報からずいぶん遅れて地震が来て、この揺れ具合だと震源は遠いが大地震であろう。
スマホを見ると今は午前3時過ぎ、震源は北海道西部とあるから「あぁ浦河あたりかな」と思った。テレビを見ようとリモコンを何度押してもつかない。あれっと思ってよくよく見ると、入り口の常夜灯も消えている。停電か。廊下に出ると非常灯が一つぽつんと点灯している。
スマホを見ると、最大震度6強で札幌でも大きな揺れとある。さらに北海道全域で停電らしい。まぁ停電はそのうち回復するだろうと30 分ほど待っていたが復旧せず 。知らぬ間にうとうとと二度寝。
次に目が覚めると外はもう明るくなっていた。天気は快晴、停電はまだ回復していない。
6時頃、宿の玄関に行くと、宿の人と宿泊者が数人「地震で停電ですねー」くらいの会話だ。人里遠く離れた停電中の一軒宿ではネット以外の生きた情報は得られず緊張感はない。
スマホから得られたのは「厚真町被害甚大」(苫小牧の東で、かつて苫東厚真発電所の横を通ったことがあった)ということ。停電が続いているが、情報には大きな変化なく、慌てようが落ち着こうが何も変わらない。源泉の汲み上げのお風呂は大丈夫かと思ったけれど電動ポンプは使っていないのか問題なく入れた。気持ち良く朝の源泉露天風呂ゆっくりとつかり、宿の前を散歩すると猫の親子が元気に走り回っている。
7時からの朝食はいたって通常通り。大型犬が横で転がっていて宿泊客とじゃれ、子猫が行ったり来たり、笑いながら食事をして食後のコーヒーも。
ちなみに震源地からここまでの距離は直線距離で約200km。東京からと考えると日本海側は新潟県直江津あたり。北海道はでかいのである。
交通期間は全道的にすべてストップで、停電復旧にはシステムの関係上時間がかかるとの情報がある。帰りは2日後の女満別空港からなので、今考えてることもないが、停電がいつ回復するかは気になる。とにかく今日は宿泊地の陸別へ向かうしかない。
自動販売機が動かないので食堂で水筒に水を入れさせてもらう。玄関には発発が準備され、エンジン始動、無事に稼働開始すると拍手が起きた。
8時過ぎに出発。今日は天気が良ければ朝のオンネトーとも考えていたけど、寄り道せずに陸別へ直行することとした。野中温泉を後にし、昨日上ってきた道を下り、足寄国道に出てからも長い下り坂が続く。バッテリーの心配があるのでスマホは省電力モードにする。もっとも人家皆無のここでは、もともと電波の届かないない場所も多いが。
8時半頃から、自衛隊の車両に追い越され始める。被災地の救助活動に向かうのであろう。
宿を出てから20km、森林から原野、そして牧場、畑と景色が変わり、今日最初の家並み上足寄地区へ。今日最初の信号と遭遇するが消えている。上足寄JAで休憩していると、次から次へと自衛隊車両がやってくる。その中にバイク隊もいたが、自衛隊のバイク隊は初めて見た。
ここから足寄市街まではさらに20kmある。自衛隊車輌の展示会のごとく様々な種類の車両が先をゆく。最初から数を数えてれば良かったが軽く100台以上。後で地図を見てみると、この旅初日の美幌や6月に訪れた別海の各駐屯地から来たと考えられる。
午前3時の地震発生でこの時間で準備を整えて、被災地へ移動しているとは頼もしさを感じることを禁じ得ない。ここまですでに100kmは移動しているのだから朝6時頃には出発したのだろうか。
数台ずつの隊列で制限速度による走行なので、一般車は隊列の最後尾につく形となる、それが一定の間隔で来て、2車線路肩狭し道での自転車を追い越す技術も完璧だから、自転車で走る身にとっては、この上ない状況である。こちらも対向車とのタイミングと退避スペースによっては適宜停車して道端待避をする。
11時、足寄の街に到着。ここでようやく地震の現実を実感する。街中の信号機は滅灯状態で、多くの店は休業している、セイコマには多くの来店客がいたが、すでにおにぎりやパンなどは売り切れ、電池類も品薄だ。とりあえず腹の足しにできるような酒の肴を入手。レジは停電でも使用可能なハンディ端末で行われていた。
道の駅あしょろ銀河ホール21(旧足寄駅)前の交差点では警察官が交通整理をしている。駅裏のスーパーFUKUHARAはペットボトルやカップ麺だけをを店頭で販売しており、道の駅は停電で休業である。
しかし、道の駅の横にある足寄駅旧駅舎。今では食堂となっているが、店の前にいた人が「ここやってるよ」と声をかけてくれた。おかげで豚丼とうどんをいただくことができた。
エネルギー補給がかない、あとは陸別まで35km。自衛隊車輌とは方角が分かれ、国道242号陸別国道に入る。
ここからは旧池北線(北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線)跡の駅巡りをしていく。
足寄駅から陸別駅までは愛冠駅、上利別駅、大誉地駅など。他にも仮乗降場やホームだけだった駅もある。国道から少し外れたところにある駅跡は愛冠駅以外は駅舎・ホームも撤去され、わずかに駅前の雰囲気を残すのみである。
Twitter情報では、今日の宿の「道の駅陸別」は営業をしているらしい。何かあれば向こうから連絡があるだろうから、こちらから電話はしなかった。
足寄を出てからの風景は地震、停電を感じさせるものはなく、いつもの普通の風景のように感じた。
昨日から丸1日、長かった足寄町から「日本一寒い町」陸別町へ。そして陸別の街に入り、15時前に旧陸別駅の「道の駅オーロラタウン93りくべつ」に到着した。
近づくと売店店内の照明が点いている、自家発電らしい。道の駅2階にある「宿泊研修施設オーロラハウス」にチェックイン。部屋に入って今日初めてテレビを見ると道内の深刻な状況が映し出される。
旧陸別駅を見学。ホーム、跨線橋、車輌が構内に並ぶ。近くでエンジン音がするので見てみると、専用倉庫の中、常設の発電装置が動いていた。出力125kVAとある、例えで言えば電子レンジなど1,000Wクラスの電気製品が同時に100台近く動かせる能力である。おかげで一晩電気が得られました、感謝。
夕食前にフロントから電話が入る。申し訳ありませんが夕食は通常の定食でなくてカレーライスとなります、とのことだけれど、もちろん問題なし。
他の宿泊者と大きなテーブルを囲みながら自販の缶ビール持参でカレーライス(サラダ付)をいただいた。
夜の陸別駅前、停電は続いている。セイコマは発発で最低限の営業を行っていて、駅前の国道交差点には投光器が置かれて強い光で道路を照らしている。
寝るまでは明日以降の行程の情報収集に専念する。道内は大部分の地域で停電。JRはすべてストップで、バスも動いていない。女満別空港は短時間停電の非常用停電はあったが長時間停電でダウンし、今日は欠航であった。ただし停電は徐々に回復し、明日は90%回復を目指すとのこと。早期復電を期待して明日へ。
最後に改めて、道の駅オーロラタウン93りくべつと発電装置に感謝いたします。