8/16(火) 曇りのち雨 羽幌-天売島-焼尻島-羽幌 39km ルート図
(文:高森千穂)
目が覚めると、雨は上がり、うっすらと日差しがさしていた。だが、今日も午後から雨とのこと。なんでこんな雨ばかりなのか恨めしくなる。毎日快晴ばかりだった昨年と真逆だ。昨年、晴天に対する感謝が足りなかった罰が、あたったのかもしれない。
夕食に引き続き上品な朝食を早めにとって、7時半にフェリーターミナルへ向かう。今日は島まで往復したらもう一泊羽幌に宿泊する予定。宿は羽幌道の駅に併設のホテル「サンセットはぼろ」に変わるのでフェリーターミナルへ行く途中に寄って、不要な荷物をフロントで預かってもらった。
8時の高速船で、まずは天売島へ渡ることにする。高速船のすぐ横で輪行準備をして乗船。一応、予約していたのだが、十数名の乗客でガラガラだった。
船からは、沖合に二つの島の影が見える。ぺたんぺたんと平べったい島だ。30分で手前の焼尻島に到着、大方の客はここで下船してしまった。
焼尻島と手売島は、一番近い場所で3~4kmほどしか離れていない。焼尻島の北西をぐるっと回って手売島へ向かう。焼尻島へは午後行く予定なので、道の状況をしっかりと見ておく。
天売島に到着。高速船のタラップは肩幅ほどの狭さで、たたんだBD-1を持って降りるのは一苦労。下船所でBD-1を組み立てていると、初老のおまわりさんに「日帰り?」と話しかけられる。おまわりさんのいうことには「犬を連れて散歩していても、一周、2時間半で回れる」とのこと。「自転車はもっと早く走れるのだから、安全運転をして、景色のいいところでは止まって写真を撮るように」といわれた。
犬の散歩で2時間半ならば、自転車ならば2周できてしまう。というわけで、ゆっくり走ることにした。
島を時計回りにまわることにする。フェリー乗り場近くの町の中心には、民宿や商店が点在していている。しかし、島の西側に向かうにつれ、周囲には何もなくなり、道は急な上り坂になる。それとともに、景色は絶景に。ちょうど、礼文島を小さくしたような感じだ。
島の西南端の見どころ「赤岩」は、ウトウの生息地だ。ウトウは昼間は海へ出てしまうので、姿を見ることはなかった。見えるのはウミネコとカラスばかりだ。
赤岩には、ボコボコたくさんの穴があいている。ウトウという鳥は、岩に穴をあけて巣にするのだそうだ。赤岩近くのトイレには、「ウトウが入ってくるのでドアは必ず閉めるように」との注意書きがあった。
少し進んだところに、海鳥観測所があった。ここにはられたパネルによると、有名なオロロンは、今年はたったの19羽しか観測されていないのだそうだ。今まで海で見かけたオロロンかと思った鳥は、ウミウだったことが判明した。オロロンを呼び戻そうと、かつての繁殖地には、レプリカが置かれていた。(望遠鏡で確認した)
手売島の西海岸は断崖絶壁で、しかも岩が切り立っており、とても人の住めるところではない。ということで、野鳥の楽園となっている。たくさんの海鳥が岩に止まっている。また、道路には、息絶えた鳥の姿をいくつか見た。
「ぺたんぺたん」かと思っていた手売島のもっとも高いところは150メートル。眼下に焼尻を見渡せたので、こちらの島の方が高いようだ。小さいながらも風光明媚な島で、天気がよければ最高だろう。
11時過ぎに雨がぱらつき始めたので、いったんターミナルへもどる。昼食には少し早かったが、雨宿りも兼ねて食事にすることにした。島に2軒しかない食堂のひとつがお休みだったので、必然的にもう一つの店へ。1軒しか開いていないので、12時前には続々と観光客が押し寄せてきたので、早めに店に入っておいてよかった。
天売島の名物はウニ丼。生ウニ丼と炙りウニ丼を頼んだが、どちらも非常においしくて、あっという間に食べてしまった。今までに北海道では、積丹、利尻、礼文でウニ丼を食べたが、手売島のウニ丼がもっとも安かった。生ウニ丼が1580円で、炙りウニ丼が1680円。ウニ丼北海道ベスト(わたし的)は手売だ。まあ、その分船賃がかなりかかるのだが。。
食後は、小雨の中、天売島灯台を見に行った。あまり訪れる人がいないのか、道はダートで両側から草がはみだしている。ヤマユリが咲き乱れていて、とても美しかった。
雨はやまないまま、午後の高速船で焼尻島へ向かう。相変わらずタラップは狭く、BD-1を持っての乗降は大変。
焼尻は手売と比べると最高標高も低く、全体的になだらかである。遠くから見ると同じように「ぺたんぺたん」だったのだが、実際に走ってみるとかなり感じが違う。少なくとも、手売西海岸のように、人の住めないところはなさそうだ。フェリーターミナルから時計まわりに走って行く。すぐに「めん羊牧場」に到着する。しかし羊は、小屋の中に入っているのか姿が見えなかった。
島の西端の鷹の巣園園では、天売島がとてもよく見える。焼尻島の一番のビュースポットは、ここだと思われる。標高100メートルで手売よりもだいぶ低い。一般的なサイクリングを楽しむのならば、手売よりも焼尻だろう。
手売と焼尻はほんの少ししか離れていないが、焼尻ではあまり海鳥を見かけなかった。鳥にとっては住みやすい、手売の西海岸に集まってしまうのだろう。
島の北側(朝、高速船から眺めたところ)は、民家が点在するのだが、大半は廃屋だった。どの家も風を防ぐための囲いをしている。生活するには厳しい地のようだ。小学校も北地域にあったが、手売の小学校に比べて質素な感じだ。
このあたりで雨が止んだ。ほぼ島内一周というところで「自転車ロードオンコ林」の看板に気付く。島内部の道はダートで徒歩専用化と思っていたが、自転車も走れるらしい。
うっそうと茂ったオンコ原生林を抜けると牧草地に出た。いた! めん羊だ! めん羊が放牧されている。
「サフォーク」というイギリス原産の羊で、顔が真っ黒なのが特徴だ。足の先も黒く、この白黒のコントラストが とてもかわいい。めん羊を見ることができて、焼尻に来て、本当によかったと思った。しばらくめん羊をながめていると、めん羊もこちらが気になるのか、何頭か柵のそばまですり寄ってくる。リーダー格の羊がいるのか、1頭が隣の放牧地へ歩き始めると、ぞろぞろと長い行列が続いた。見ていてあきなかった。
いつまでも羊をながめていても仕方がないので、南海岸に抜けてフェリーターミナルへもどった。まだしばらく時間があるので、走り残した道を走って、島内一周を完成させた。
出航30分前に乗船手続きをすませ、時刻どおりに入港してきたフェリーに乗る。フェリーなので、別途料金がかかるが自転車はそのまま乗船することができる。フェリーは手売島をまわってから来るので、まずまずの乗船率である。小雨が降っていたのでデッキに出ることはせず、船内でテレビの高校野球を見ながら、まったりと羽幌までの航路を進んだ。
羽幌に到着するとまた大雨(泣)かなり強い。今年は本当に、雨にたたられてばかりだ。
さて、今日の宿「はぼろ温泉サンセットプラザ」は、道の駅併設ホテルながら、ここらあたりでは最も豪華なリゾートホテルだ。温泉は広くバラエティに富んでおり、部屋も広くおしゃれで、とても人気のホテルだという。(事実、連泊したかったのが、昨晩は予約がとれなかった) その分、お値段も道北とは思えない金額だったが、内容を考えると納得だった。
夕食は、最上階のバーラウンジで、焼尻めん羊のソテーをいただいた。昼間「かわいい」といっていためん羊の子羊を、夜には「おいしい」と食べる勝手な人間だった。