羽田空港・・・函館空港・・・函館駅・・・木古内-知内-福島-吉岡-白神岬-松前
61km 晴れ
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【文:高森千穂(ねこBD)】
5時に家を出発。東海道線と京急で羽田空港へ。7時35分発のJAL1161便に搭乗した。朝のラッシュ時間のため、15分ほど遅れて離陸、函館には9時過ぎに到着。預けていた自転車は、一番最後にターンテーブルに乗って出てきた。「手渡し」してくれる空港が多いのだけれど……
函館空港からはバスで函館駅へ。高台にある空港から下ると湯の川温泉の中を通っていく。湯の川温泉から函館駅へは、4年前に自転車で走っている。当時も今日も快晴。函館山がくっきり見える。
函館駅からはJR江差線に乗る。函館駅は改札口からプラットホームまで段差のないバリアフリーな駅で楽だ。江差線各駅停車は、1両のワンマンカーだが結構な乗車率である。
函館山や津軽海峡を眺めながら、上磯、渡島当別を通って1時間余り、11時15分に木古内駅に到着。木古内駅は津軽海峡線の駅で、北海道の玄関口である。ちなみに、今朝乗車した藤沢駅5時31分発の東海道線で東京駅から新幹線+特急で木古内駅を目指した場合、なんと、12時半には到着するのである。飛行機とたったの1時間ちょっとしか違わないのだ。ビックリである。
木古内はかつては交通の要所だったが、ここも他の地と同様、寂れた感じがする。駅の入口に「みなみ北海道ぐるりんMAP」というパンフレットがあったのでとってきたが、この地図はのちのち非常に役に立った。
駅前には創業45年「駅前食堂急行」という、そそられる食堂があった。「やきそば弁当」が名物だそうだが、まだ昼食にはちょっと早いのでパスした。
海沿いの国道228号に出て走り始める。快晴のためか、かなり暑い。真夏の道東や道北とまったく変わらない。半そでで十分走れる。向かい風がちょっと強い。
木古内町はすぐに終わり、隣の知内町へ。ここのカントリーサインには「おおっ」とひかれた。青函トンネルの北海道側の出口のある町なので、485系が描かれているのだ。しかも国鉄色! 感激である。
知内市街で駅跡らしいバスターミナルを見かけた。後で調べたら廃止された松前線の渡島知内駅跡らしい。ちょうど昼時であるが、食堂がみあたらない。町のはずれのセイコーマートでおにぎりの軽食をとることにした。都合よく、店先にはベンチが置かれている。ベンチにすわって一休みである。
ここからは海沿いの道はとぎれるので、山を横断する道になる。北西に進路が変わると風向きも変わって走りやすくなり、広々とした水田の中を進む。
津軽海峡線の高架橋が見えるとまもなく「道の駅しりうち」に到着。さきほどのセイコーマートから7kmほどだったので、ここまでお昼をがまんすればよかった。ざるラーメンにイカ焼きを注文。イカ焼きはとてもおいしかった。売店ではスタンプラリー帳を買い、さっそくスタンプを押す。ここ数年、北海道の道の駅のスタンプ集めが趣味となりつつある私である。
知内は北島三郎のふるさとということで、道の駅ではガンガンにサブちゃんの歌を流していた。ちょっとうるさいぐらい。津軽海峡線知内駅も併設しているが、こちらはオマケ的扱いである。なぜなら、知内駅には上下あわせてたった4本しか電車が止まらないのだ。秘境駅である。
知内川の橋の手前では青函トンネル出口の撮影台があり、高架橋の先にトンネルが見える。(正確には青函トンネルはその次のトンネルらしい)
知内温泉の分岐を過ぎ、福島峠に向けてだらだらと上り坂となるが、ほとんど負担に感じない。福島町に入り、千軒の集落まで80メートルほどのぼっていた。ここから峠の福島トンネルまでは「ああ、上り坂だな」と感じる傾斜になり、160メートルまでのぼった。
トンネルを抜けると、転がるように坂を下りていって、福島の町まであっという間だった。トンネル出口付近にあった「山は海の恋人」という看板に「?」。わかるようなわからないような……。
福島町には記念館が二つある。「青函トンネル記念館」と「横綱千代の山 千代の富士記念館」である。鉄道には興味アリアリだが、相撲は「……」なので、「青函トンネル記念館」にのみ入館。青函トンネルを模した館内には、トンネルに関する資料が満載である。面白かったのはトンネル建設のドキュメンタリー映画(10分)と、鎖につながれた1匹のAIBO。AIBOは暇でさびしそうに見えた。
青函トンネル記念館を過ぎるとすぐに「道の駅 横綱の里福島」に到着。道の駅というより、乾物屋という方が正しい。スタンプだけ押して出発。隣の「横綱記念館」はとても立派だった。道行く函館バスの車体にもでかでかと描かれている。
しばらくして「民宿ペンション鶴」を発見。しまださん・ロボさんが泊まった民宿である。竜飛岬もすぐ目の前に見える。この海の下を青函トンネルが通っているのかと思うと不思議な感じがする。
「民宿ペンション鶴」のさらに先、吉岡の小高い丘の上には、「青函トンネルメモリアルパーク」がある。さきほど「青函トンネル記念館」で得た知識によると、トンネル工事に従事した人たちのアパートがあったところだ。けれどもトンネル開通20年近くがたった今、ただの野っぱらとなり、ススキが風にゆれているだけだった。当時の面影はまったくなかった。
ここから先、穏やかだった海岸線が一変する。断崖絶壁となり、道路も覆道やトンネルが多くなる。襟裳岬の黄金道路のような景色である。どっから昇るのか分からない松浦展望台、白神トンネル、赤石トンネルを抜けると松前町に入る。
北海道最南端の白神岬で記念撮影。竜飛岬が海の向こうにはっきりと見える。その距離19キロ。ほんとに近いんだなあと思った。白神岬から松前までの道は非常に快適だった。車も少なく、北海道日本海側の断崖絶壁を堪能した。
さらに、松前市街の近くで松前線の廃線跡に遭遇。しまださんやロボさんの日記で存在することはわかっていたが、想像以上に素晴らしい形で残っていた。
ちらっと見えた鉄橋に、国道をはずれてわき道に入ったのだが、これが大正解。歴史と哀愁を感じさせる遺構だった。道路の上の鉄橋のみはずされたため、とぎれた鉄路が橋脚から青空に突き出ているのだ。しばし絶句して眺めてしまった。鉄道に興味がない人には「なんじゃこりゃ」な眺めだが、鉄道好き(特に廃線オタク)には、たまらない光景だろう。
その後も何度か松前線の遺構を横目にしながら松前の市街に入る。城前の通りは「美観地区」なのか、きれいに整備されていた。もう17時過ぎていたので、城は見学せず、本日の宿、よこはま荘へ。
よこはま荘は、一部には有名な「本物の松前漬の製造・販売」をしている宿である。本当は別の宿にしようと思っていたのだが、電話がちっともつながらなかったのでこちらの宿にしたのだが、これがかえってよかった。食事がとってもおいしかったのだ。イカ刺しはもちろん、カワハギ(松前ではチュンチュンと呼ぶそうだ)の揚げ物、つみれ汁などなど。特にハツメの竜田揚げがめちゃめちゃおいしかった。ハツメをまるごと揚げたもので、骨以外はすべて食べられるというものだ。
「本物の松前漬」ももちろん出していただいたが、ショウガの味がきいていてこれも美味。自転車でなければ買って帰ったのだが……。
よこはま荘 一泊二食 6500円 中ジョッキも1杯400円と良心的。
宿のご主人が「値段の割には食事がおいしかったでしょ」とおっしゃっていたがその通り。お勧めの宿です。